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愛と萌えのパワーをピンキー改造に燃やすブログです。

誕生日
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       蒼穹のはぁと♪




     「わざわざこんなトコに呼び出すなんて…」


  夏休み最初の登校日…と言っても、総士は欠席で、一騎は拍子抜けして席に着いた。 
  季節もカレンダーも変わって、それ以上に日常生活が全く変わって、苦痛でしかなかった教室も『総士と一緒』の場所になっていた。 

  でも、総士は登校してこなかった。 





    「宿題というのは、義務なのだろう?」


  隣の席についたカノンが真矢のドリルを見せて貰いながら、初めての夏休みの宿題を説明されていた。 
  そんな声をぼんやり聞きながら、一騎は何気なくひんやりする机の中へ手を入れた。


   カサッ…


    「ん?」


  指だけで探ると、キチンと小さく畳まれた紙だった。 急にドキドキして、一騎は机の突っ伏した。


    ―― 果たし状なら下駄箱だよな


  そおっと引き出して、顔の下に潜らせて見る。 


    ―― 総士の字だ!


    『本日 山頂 1345 6時方向』 


  文字を読み取った目の奥からじわっと嬉しさがこみ上げてきて、胸のところでぷちっ!と弾けた。


    「やった!」


  思わず机を叩いて、隣のカノンと真矢に振り向かれた。


     「一騎くん?」 「どうした?」

     「ん…いや…」










  全校清掃で1時過ぎに下校した一騎は、カバン部屋に放り込むとひとり山へダッシュした。 
  総士より1分でも早く着いていたい一騎は、家からノンストップで登頂を果たした。
  時計など持っていない一騎は、空と光の加減で遅刻はしていないと安心して、あの手紙をもう一度見直した。


    「あ! これ、いつの間に置いたんだろ、総士のヤツ」


  にやにやしながら文字を辿って、はたと気付く。


    「本日って、もしかして…今日じゃな…」


  嬉しさでパンパンだった胸が、しゅうぅぅ~んとしぼんでいく。 ふうっと体の力が抜けて、一騎はその場にしゃがみ込んだ。


    「何だ、見てくれないのか」



    「えっ!?」


  すぐ後ろに総士が立っていて、風が梳く髪を片手で押さえながら微笑んでいた。


    「総士!」


  抱きつきそうな勢いの一騎をまなざしで制して、髪を押さえていた手を放して空の一点を指さした。


    「見ていてくれ」

    「何を?」

    「今、教える」


  一騎に並ぶと総士はそっと指を搦めた。 ドキッとした一騎は、自分の手が瞬時に汗ばむのを感じてどうしようもなく慌てた。


    「…これは単なるテストだ。 緊張しなくていい…」

    「てすと?」

    「システムなしのクロッシングだ。 そのまま、空を見ていてくれ」

    「な!」


  驚きの隙間に何かが沈み込んできた。 一騎はぎゅっと総士の手を握り返して、空を見上げた。


    「あ!」


  一騎の視界が一瞬もやって、すぐに焦点がはっきりした。 
  空の色がより濃く鮮やかに見えた。 その空にくっきりと白く、軌跡が引かれていく。 



    「見えるか」

    「見えるよ! 総士、あれ…」

    「ならいい」

    「総士?」


  空に描かれた形に目を奪われているうちに、ふっ…と手が離れ、海風がふたりの手の間をすり抜けた。 
  総士の手を求めた指が、空しく風を掴んだ。


     「何が見えたか、聞かないのか」

     「…見えたんだろう」

     「うん、でも、総士は…」

     「同じものを見ていた」


  手を放した総士も、空を見上げたまま応えた。


     「僕も一緒に飛ぶ。 きっと」

     「え?」

     「テストは成功だ。 この感覚忘れるな」

     「忘れるもんか!」

     「ご苦労だった。 では」



     「総士っ!」


  現れた時のようにさっと身を翻して、総士はアルヴィスの通路へ消えようとしていた。 

  空に見えた形の意味を聞こうとした一騎の声が届く前に、総士は見えなくなった。 
  取り残されて、しばらくぼおっと立ち尽くしていた一騎は、強い海風にあおられてやっと我に返った。 
  空のあの位置へもう1度目を上げて、白いハートの軌跡を思い浮かべた。


     ―― 意味なんて聞く必要ないや


  そして、意味を聞かれる前に総士が逃げていったのだと思い当たって、一騎はひとりで笑った。 







  総士が『幸福の18時間』をはじき出した、その日のこと。












                 ―― 皆城きゆ様 祝サイトBD!―― 

サイトの誕生日に小説を書いてもらっちゃいました
写真もうまいこと合成できたし言うことなしです
2周年目もがんばります!











 


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